願いかなったパラ開会式 出演した聴覚障害のある中村清美さん 夫のサポート支えに世界発信(東京新聞 夕刊 2021年9月1日(水)配信)

国立競技場で8月24日にあった東京パラリンピックの開会式に、2人組の音楽グループ「アツキヨ」として活動する佐々木厚さん(46)、中村清美さん(44)夫妻=東京都足立区=のうち、聴覚障害がある中村さんが出演した。2人そろって出るという目標には届かなかったが、佐々木さんが中村さんを献身的にサポート。中村さんは「これからの人生を豊かにしてくれる思い出になった」と振り返った。(小松田健一)

=東京パラリンピック開会式の一場面。前から2列目の右から2人目が中村さん=8月24日、国立競技場で=

◆共演者を目で追いタイミング合わせ

 2人は全国の学校や福祉施設などへ出向いてのライブを中心に活動している。2013年に東京パラリンピック開催が決まった直後から参加を目指してきた。あるファンから開会式の出演者を選ぶオーディションの開催を教えてもらい、迷わず応募。アツキヨとしては不合格だったが、中村さん個人が合格した。
 開会式には会場を空港に見立てた演出があり、中村さんが演じたのは、航空機を発着ゲートに誘導する職員「マーシャラー」。「緊張はしたが、画面越しに世界の人が見ていると思うとうれしかった」
 練習は都内や千葉県内の公共施設などで行われたが、感染予防のため公共交通機関を使わないようにした。佐々木さんが車で送迎し、子どもの世話も一手に引き受けた。中村さんは「アツシ(佐々木さん)の協力があったからできた」と感謝する。

=開会式のリハーサル時に共演者と記念撮影する中村さん(左端)=中村清美さん提供=

 出演者には、さまざまな障害がある人がいた。中村さんは音楽に合わせて動くのが難しかったが、共演者の動きを目で追いながらタイミングを取った。「周囲の人がいろいろな助言をしてくれて、本番では最高のパフォーマンスができた」と笑顔を見せた。

◆もうひとつの願いも

 開会式では、中村さんのもうひとつの願いもかなった。大会名誉総裁として出席された天皇陛下との「再会」だ。アツキヨは10年、千葉県で開かれた全国障害者スポーツ大会のアトラクションに出演し、手話を交えたオリジナル曲を披露した。その際、中村さんがサビ部分の手話を貴賓席にいた皇太子時代の陛下へ「ご一緒に」と呼び掛けたら、にこやかに応じてくれた姿が忘れられなかった。
 新型コロナウイルスの感染が拡大する中で開かれている大会。「コロナが早く収束し、陛下も11年前のような満面の笑みを浮かべられるようになってほしい」と願っている。
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